research-transfer-checker
研究結果の援用が原研究の射程内にあるかを検査する。目的は、主張の真偽を最終決定することではなく、原研究から援用主張へ至る推論を監査可能にすることである。
実行モード
standard / deep / high_impact のいずれか1つで実行する。$ARGUMENTS での明示指定を最優先し、なければ依頼文中の明示的な言及に従い、どちらにもなければ standard を既定値とする。$ARGUMENTS と依頼文が異なるモードを指す、複数のモードが同時に指定されている、またはモード名としてこの3つ以外の値が指定されている場合は、実行を始めず AskUserQuestion でどのモードにするか確認する。3モードは深さの一段階ずつの積み重ねであり、high_impact は deep の処理をすべて含む。決定したモードは出力冒頭に明記する。
| モード | 選び方 | 処理 | standard との差分 |
|---|---|---|---|
standard |
既定。モード未指定時に使う | Step 1〜4・7・8 のみ実行する | 基準 |
deep |
明示的に指定 | standard の処理に加え、Step 5 の橋渡し根拠探索を実行する | 橋渡し根拠を探索し、探索日・検索語・確認した情報源の種類を出力に記録する |
high_impact |
明示的に指定 | deep の処理に Step 5 を含めたうえで、Step 6 の規範選定と具体的な害の経路評価を実行する | 規範の参照と、害の経路の具体的な評価を出力に追加する |
standard は網羅的な追加文献探索や規範一覧を行わない。ただし、Step 4 による推論の格上げ・射程移送の検出は standard でも通常どおり機能する。standard では transfer_status に justified を付けない。射程移送を検出しても橋渡し根拠を探索していないため、通常は plausible_but_uncertain または not_assessed とする。not_established は、探索なしに入力資料自体が明確に反証している場合に限り付けてよい。
厳守事項
citation_supportのdirect・qualified、transfer_statusのjustifiedは、全文を検証できた資料(source_access: full_verified)からしか付けない。抄録や二次資料だけでこれらの肯定的な値を付けない。- ただし、資料の記述が主張と明確に矛盾する、または格上げが明確に読み取れる場合は、全文がなくても
citation_support: overextended/contradicted、transfer_status: not_establishedを付けてよい。 - 全文の一部だけを確認できない場合は、確認できない部分だけを
unverifiable/not_assessedとする。他の軸や他の命題は確認できた範囲で通常どおり判定し、ケース全体を検証不能として扱わない。 - 肯定的な値を真実の保証、否定的な値を虚偽の断定として扱わない。
- 研究不正、倫理違反、差別意図、著者や援用者の動機を推定しない。
- 追加探索で根拠が見つからなくても、根拠が存在しないと断定しない。「今回の探索範囲では確認できない」と書く。
- 学術的・倫理的・法的な最終判断と公開可否は、人間の専門家へ委ねる。
- 規範名を権威づけに使わない。対象研究に適用でき、実際に判断へ使った規範だけを挙げる。
Step 1. 入力を確定する
次の入力を解決する。
- 実行モード:
standard/deep/high_impact。上記「実行モード」の表に従い決定する - 援用したい主張
- 参照元の原論文、記事、URL、DOI、またはローカルファイル
- 任意情報: 想定読者、利用目的、対象領域
主張または参照元を特定できない場合に質問する。実行モードは、未指定であれば質問せず standard とし、競合・重複・不正な値であれば「実行モード」の規定どおり AskUserQuestion で確認する。想定読者などの任意情報がなければ、一般公開を想定して検査し、その前提を出力する。
「すべて」「常に」「誰でも」などの全称表現や、例外を示さない一律の制度提言は、暗黙に「該当職種だけ」などの狭い対象へ読み替えない。文言どおりの広い射程で検査し、その解釈を出力する。複数の解釈で判定が変わる場合だけ対象範囲を質問する。
上記は、主張自体が明示的な全称表現や一律の制度提言を含む場合の規定である。主張が原研究の対象集団や手法を、選定基準・除外基準・専門用語を逐一列挙しない通常レベルの要約や、読者に自然に伝わる言い換えで述べているだけの場合(例:「18歳以上65歳未満、HbA1c 7.5%〜9.5%の成人2型糖尿病患者」を「成人の2型糖尿病患者」と述べる、指導法を「A塾方式」のように通称で呼ぶ等)は、この規定の対象ではない。主張が原研究の除外基準に該当する対象を含めている、原研究が扱っていない個人・年齢層・地域・時代・制度を明示的または文脈上明確に指している、あるいは原研究とは別の対象を指すと読める具体的な手がかりがある場合に限り、対象範囲が広がっていると判定する。要約や言い換えの詳細さが原論文と揃っていないことだけを理由に、citation_support を下げたり transfer_status の軸を追加したりしない。
義務化、禁止、除外を含む提言では、誰が誰に何を課すか、対象法域、例外、強制手段を入力から抽出する。未指定の要素を発明せず、対象全体へ一律に課す一般的な拘束規則として検査し、その解釈と法的妥当性を評価していないことを出力する。強制主体などの違いで援用判定が変わる場合だけ質問する。
記事やレビュー論文が実証研究を引用している場合は、その引用元の原論文までたどる。題名、著者、掲載誌、年、DOI などを照合し、同名資料やプレプリントと査読版を取り違えない。
Step 2. 資料を検証する
ローカルファイルは Read、URL は WebFetch、DOI や書誌情報の探索は WebSearch を使う。参照した資料それぞれについて、references/decision-rubric.md の基準で source_access を判定する。
- 全文と、判定に必要な表・図・補足資料を読める。
- 資料を一意に特定できる。公開物では著者、題名、年、掲載元、DOI または安定したURLを照合する。未公開資料では著者または作成組織、題名、日付、版を確認する。
- 公開物では出版社や著者の訂正、懸念表明、撤回通知、査読版の更新を確認できる。
1〜3をすべて満たせば full_verified、全文は読めるが2または3を確認できなければ full_unverified とする。全文を読めず、抄録・構造化抄録のみ読めれば abstract_only、レビューや記事などの二次資料の記述からしか確認できなければ secondary_only、資料そのものにアクセスできなければ unavailable とする。
ユーザーが「全文」と呼んでいても、Methods、Results、Limitations などを抜き出した要約、構造化抄録、一部の貼り付けは全文とみなさない。公開物の書誌情報がない場合や、未公開資料の来歴を確認できない場合は full_verified にしない。引用箇所は、ページ、節、表、図のいずれかで再特定できる範囲を「原研究との対応」に明記する。特定できない箇所はその旨を書く。
source_access が full_verified に満たない場合でも、判定を一律に止めない。Step 7 の非対称ゲートに従い、確認できた範囲で citation_support と transfer_status を判定し、確認できない部分だけを unverifiable / not_assessed とする。二次資料を使う場合は、原論文の結論と限界を正確に伝えているかを、その二次資料自身の記述の範囲で確認する。原研究本体と橋渡し資料など複数の資料を使う命題では、source_access を軸ごとに判定する。橋渡し資料が弱くても、原研究本体が full_verified であれば citation_support の判定は制限しない。
資料に一切アクセスできない場合(source_access: unavailable)は、その資料に依存する軸の integrity_concern を 判定保留 とする。暫定所見に明白な本質化や排除の危険がある場合は、その表現と予見できる害を示す。ただし、原研究を歪めているとの判定はしない。
Step 3. 主張と原研究を同じ粒度にする
援用主張を、個別に真偽条件を持つ原子的な命題へ分解する。特に次を分離する。
- 経験的主張と価値判断
- 集団平均と個人についての主張
- 記述、予測、因果説明、規範的提言
- 複数の対象集団、制度、時代、文化についての主張
主張が原研究自身の所見の言い換えと、別の対象・時代・文化・制度への適用を同時に含む場合、原研究の所見をそのまま反映する部分を独立した命題として切り出す。この命題は原研究との対応関係だけで判定し、同じ主張に含まれる別の命題が射程移送を伴うことを理由に格下げしない。
原論文から次の研究プロファイルを作る。本文にない情報を推測で補わない。
| 項目 | 抽出内容 |
|---|---|
| 研究課題 | 著者が実際に検証した問い |
| デザイン | 実験、観察、事例、質的研究、レビューなど |
| 対象 | 種、集団、標本、選定条件、除外条件 |
| 文脈 | 文化、地域、時代、制度、実施環境 |
| 操作 | 介入または曝露、比較対象、測定方法 |
| 結果 | 評価項目、効果量、区間推定、主要な不確実性 |
| 限界 | 著者が述べた限界と、方法から直接確認できる制約 |
| 結論 | 著者の結論を確実性の表現を保って要約したもの |
Step 4. 推論を検査する
references/decision-rubric.md を読み、各命題について次を検査する。
- 結論、対象、方法、限界、確実性を正しく引用しているか(
citation_supportの基礎)。 - 種、集団、個人、文化、時代、制度、概念をまたいでいるか(
transfer_statusの基礎)。 - 相関を因果、示唆を証明、事例を一般則、事実を規範へ格上げしていないか(
citation_supportを下げる要因であり、reasoning_typeに記録する)。 - 移送を支える比較研究、再現研究、理論、測定同等性、外的妥当性の根拠、価値前提があるか(
transfer_statusの基礎)。 - 属性の本質化、個人への機械的適用、偏見、排除、不利益な制度判断を正当化していないか(
integrity_concernと社会的リスクの基礎)。
本文の著者主張と、この検査で導く方法上の評価を区別する。著者が限界を書いていないこと自体を、限界がない証拠として扱わない。
Step 5. 橋渡し根拠を探索する
standard モードではこのステップを実行しない。deep と high_impact モードで、命題の transfer_status が no_transfer でない場合だけ、移送先と移送元を直接比較する一次研究、再現研究、体系的レビュー、妥当な理論を対象を絞って探す。主張を支持する資料だけでなく、反証または境界条件を示す資料も探す。
判定に影響させる橋渡し資料ごとに、Step 2 と同じ基準で source_access を判定する。full_verified の資料だけを transfer_status: justified の根拠にする。確認を完了できない資料は「未確認」として探索結果から区別し、justified への格上げには使わない。反証や境界条件を示す資料は、full_verified でなくても not_established の根拠に使ってよい。
探索日、使用した検索語、確認した情報源の種類を記録する。この探索は体系的レビューではない。網羅性が必要な依頼では、このスキルの判定と分けて体系的レビューを提案する。
Step 6. 規範を選び、害の経路を評価する
standard と deep モードではこのステップを実行しない。high_impact モードでだけ実行する。ここでの評価は、全モードで実行する Step 4 の「社会的リスク」の言い換えではなく、それとは別に行う踏み込んだ評価である。
規範を選ぶ
references/standards-map.md を読み、研究デザインと利用目的に合う規範だけを選ぶ。公式ページで現行版と適用範囲を確認する。
- ALLEA と日本学術会議の規範は、正確な伝達と社会的責任を検討する共通基盤として使う。
- AERA は経験的社会科学にだけ使う。
- ARRIVE は生体を用いた動物研究の報告充足性を確認する場合だけ使う。
- 医療、心理、教育などに分野固有の指針がある場合は、公式の発行主体から確認して追加する。
規範が援用の可否を直接定めていない場合は、その規範から結論を導かない。どの条項を何の判断に使ったかを明記する。規範は、判定に必要な情報が欠けていないかを確認する目的でだけ引用し、判定の根拠や権威づけの代用にしない。
具体的な害の経路を評価する
Step 4・Step 5 で確認した内容をもとに、この命題が政策、医療、教育、雇用、報道などで実際に使われた場合に、誰が、どのような経路で、どの程度の害を受けうるかを具体的に記述する。脱落した限界、選択的引用、属性の本質化など、裏付けとなる根拠を資料上で確認できない場合は「特記なし」とする。ただし、Step 2 の規定により資料に一切アクセスできない軸については、「特記なし」にせず、未確認の暫定所見であることを明示したうえで、主張の文言自体から予見できる害の経路をここに示す。この暫定所見は、確認済みの根拠、integrity_concern、または確定的なリスク判定の代用にしない。
題材が政治的・社会的に敏感である、論争的である、標本が小さいといった事情だけでは、integrity_concern をtrueにしたり、リスク評価を引き上げたりしない。integrity_concern の判定基準は references/decision-rubric.md のとおりで、high_impact モードでも変わらない。
この節を出力すること自体、また害の経路を具体的に記述できること自体は、integrity_concern を true にする根拠にならない。true にできるのは、overextended・not_established・題材の敏感さとは別に、選択的引用や重大な限界の脱落などの具体的な問題を資料上で特定できる場合だけである。
Step 7. 判定する
各原子的命題へ次の2軸を独立に付ける。
citation_support:direct/qualified/overextended/contradicted/unverifiabletransfer_status:no_transfer/justified/plausible_but_uncertain/not_established/not_assessed
references/decision-rubric.md の非対称ゲートに従う。citation_support は原研究本体の source_access、transfer_status の justified は橋渡し資料の source_access を基準に、軸ごとに判定する。基準とする資料の source_access が full_verified に満たない場合(full_unverified・abstract_only・secondary_only・unavailable)、その軸に citation_support の direct / qualified、または transfer_status の justified を付けない。ただし、資料の記述が主張と明確に矛盾する、または格上げが明確に読み取れる場合は、全文がなくても citation_support: overextended / contradicted、transfer_status: not_established を付けてよい。
全文の一部だけを確認できない場合は、確認できない部分だけを unverifiable / not_assessed とし、確認できた軸・他の命題は通常どおり判定する。ケース全体を検証不能として扱わない。
各命題にはさらに次を付ける。
source_access: この命題の判定に使った資料の取得状況confidence: 高 / 中 / 低missing_evidence: 判定を確定するために不足している資料や、確認できなかった部分。なければ「該当なし」reasoning_type: 検出した推論の格上げまたは射程移送の分類。なければ「該当なし」corrected_claim: 原研究の確実性と射程を保った修正文。修正しても支えられない命題は削除を提案する
integrity_concern は両軸と独立した警告として true または false を付ける。重大な誤導や社会的害の現実的な経路があり、かつ選択的引用、重大な限界の脱落、属性の本質化などの具体的な問題を特定できる場合だけ true にする。単なる根拠不足、論争的な題材、政治的な敏感さだけでは true にしない。資料に一切アクセスできない場合は 判定保留 とする。true にする前に、references/decision-rubric.md の規定どおり、その理由が overextended / not_established / 題材の敏感さの言い換えになっていないかを確認する。
複数命題の結果は件数と最も重大な問題を要約する。最悪値だけを全体判定として表示しない。
Step 8. 出力する
## Research Transfer Check
### 対象
- モード: standard / deep / high_impact
- 援用したい主張:
- 参照元:
- 想定読者・利用目的:
### 資料の取得状況
- <資料名>: full_verified / full_unverified / abstract_only / secondary_only / unavailable
### 判定サマリー
- citation_support: direct N件 / qualified N件 / overextended N件 / contradicted N件 / unverifiable N件
- transfer_status: no_transfer N件 / justified N件 / plausible_but_uncertain N件 / not_established N件 / not_assessed N件
- integrity_concern: true / false / 判定保留
- 最も重大な問題:
### 命題別の検査
#### C1. <原子的な命題>
- citation_support: direct / qualified / overextended / contradicted / unverifiable
- transfer_status: no_transfer / justified / plausible_but_uncertain / not_established / not_assessed
- source_access(citation_support の根拠資料): full_verified / full_unverified / abstract_only / secondary_only / unavailable
- source_access(transfer_status の根拠資料): full_verified / full_unverified / abstract_only / secondary_only / unavailable / no_transfer のため該当なし
- confidence: 高 / 中 / 低
- integrity_concern: true / false / 判定保留
- 問題のある推論箇所: <該当なし、または具体的な文言>
- reasoning_type: <該当なし、または分類>
- 原研究との対応: <本文のページ・節・表・図を示す。全文未確認の場合は確認できた範囲を示す>
- missing_evidence: <該当なし、または不足している根拠・未確認の部分>
- 社会的リスク: <具体的な害の経路。該当しなければ「特記なし」>
- corrected_claim: <確実性と射程を保った修正文。修正しても支えられない場合は削除を提案>
### 追加探索
- 探索日:
- 検索範囲:
- 使用した検索語:
- 確認した情報源の種類:
- 確認できた支持・反証・境界条件:
- 限界: 対象を絞った探索であり、根拠の不存在を証明するものではない
### 参照した規範・報告基準
- <名称・版・適用した節>: <この検査で使った理由>
### 具体的な害の経路評価
- <命題ID>: <誰が・どのような経路で・どの程度の害を受けうるか。該当しなければ「特記なし」>
### レビュー上の留保
この結果は研究不正や倫理違反を認定するものではない。学術的・倫理的・法的な最終判断と公開可否は、対象分野の専門家が原資料を確認して決定する。
standard モードでは「追加探索」「参照した規範・報告基準」「具体的な害の経路評価」の3セクションを省略する。deep モードでは「追加探索」だけを出力し、残り2セクションは省略する。high_impact モードはすべてのセクションを出力する。
特定の軸や命題の一部だけを確認できない場合も、上記の様式でそのまま出力し、確認できない軸だけを unverifiable / not_assessed とする。2つの source_access が異なる場合も両方をそのまま出力し、弱い方の資料に依存しない軸の値を巻き込んで制限しない。資料に一切アクセスできず、すべての命題ですべての軸が判定不能になる場合だけ、命題別の検査を省略し、確認できた書誌情報、不足資料、検証再開に必要な情報、主張自体から予見できる暫定的な社会的リスクを出力する。