目的
公共ダッシュボードや説明責任が必要な可視化において、見た人が誤解なく事実を把握し、判断できる状態をつくる。
このスキルは、見栄えではなく「誰が見ても同じ解釈ができること」「データの出所と時点が明確であること」を最優先にする。
適用場面
- 行政・公共機関のダッシュボード設計・レビュー
- KPI資料・進捗報告の図表設計
- 説明責任が伴うレポート・提案書の可視化
- 誤読リスクを下げたい既存ダッシュボードの改善
- 公開資料に含めるグラフ・表の選定
基本姿勢
- 実績だけを見せず、常に比較軸(目標・計画・前期)を持たせる
- データの基準時点と出典を省かない
- 色や位置だけに意味を持たせず、ラベル・凡例・注記で補う
- 読み手に前提知識を要求しない
- 誤読を招く表現は、わかりやすさより誤解のなさを優先して排除する
優先原則
1. 比較軸を必ず持たせる
- 実績値には目標値・計画比・前期比のいずれかを必ずセットで示す
- 比較基準が何かをタイトルまたは注記に明示する
- 比較基準を変えた場合は、その変更を注記する
2. データの信頼性を担保する
- 基準日時を「YYYY年MM月DD日時点」の形式で明記する
- 出典・責任主体(組織名)を毎ページ・毎画面に記載する
- 定義が変わった指標には変更時点と変更内容を注記する
3. 1画面1論点
- 1つのダッシュボード画面に問いを1つだけ置く
- 主指標と補足情報の優先度を視覚的に区別する
- 論点が増えた場合はページを分割する
4. 意味を言葉で補う
- 数値には単位を必ずつける
- グラフには対象・期間・粒度を明記する
- 色だけで良し悪しを伝えない
KPIルール
- KPIカードには「実績値」「目標値」「計画比(%)」の3点をセットで表示する
- 実績のみの表示は不可(比較軸なしのKPI表示は禁止)
- 達成・未達の区別は色だけに頼らず、数値または記号(▲/▼)で補う
- 複数KPIを並べる場合は、重要度の高い順に左上から配置する
- ゲージは最大値の根拠(目標値・上限値)を明示しないと使わない
グラフ選定ルール
目的別の選定基準
| 目的 | 優先するグラフ | 避けるグラフ |
|---|---|---|
| 時系列の変化・傾向 | 折れ線グラフ | 棒グラフ |
| 規模感の推移を強調 | 面グラフ | 折れ線グラフ単体 |
| カテゴリ間の大小比較 | 棒グラフ(縦棒 or 横棒) | 円グラフ、ツリーマップ |
| 大小比較 + 推移を同時に示す | 複合グラフ(棒+折れ線) | 2種のグラフを別々に並べる |
| 総量 + 内訳の構成を比較 | 積み上げ棒グラフ | 複数の円グラフを並べる |
| 構成比のカテゴリ間比較 | 100%積み上げ棒グラフ | 複数の円グラフを並べる |
| 増減の要因と内訳 | ウォーターフォール図 | 棒グラフ単体 |
| プロセスの段階的減少・離脱 | ファネル | 折れ線グラフ |
| 構成比(3項目以内) | 円グラフ・ドーナツグラフ | 積み上げ棒(直感性優先の場合のみ) |
| 地域差の可視化 | 地図(シェイプ+色の濃淡) | 都道府県を横に並べた棒グラフ |
| 階層構造の大小関係 | ツリーマップ | 棒グラフ(階層がある場合) |
| 2変数の相関・分布・外れ値 | 散布図 | 折れ線グラフ、棒グラフ |
| 複数指標の横断参照・詳細値 | 表・マトリックス | グラフ(精確な値の参照が目的の場合) |
誤用しやすいパターン
よく見られる誤用を明示する。選定表の「避けるグラフ」と合わせて確認すること。
- 地域差の可視化:都道府県を大量の棒グラフで並べない。地図(シェイプ+色の濃淡)を使う
- 構成比のカテゴリ間比較:複数の円グラフを並べない。100%積み上げ棒グラフに切り替える
- 増減要因の説明:棒グラフ単体で済ませない。内訳を示す必要があればウォーターフォール図を使う
- 階層構造のないデータ:ツリーマップを使わない。カテゴリ比較なら棒グラフを使う
棒グラフの軸
- 縦軸・横軸は原則0始点とする
- 0始点でない場合は「軸は〇〇から表示」と注記する
複合グラフ(2軸)
- 2軸の単位が異なる場合は、タイトルまたは凡例に単位を明示する
- 2軸を使う理由が説明できない場合は使わない
タイトル・注記ルール
- タイトル構造:
ダッシュボードタイトル|サブタイトル(主題と補足を|で区切る) - タイトルだけで「何の・いつの・何と比べた」数字かわかるようにする
- 基準日時は左下フッターに固定:
YYYY年MM月DD日時点の数字 - 組織名・出典は右下フッターに固定
- グラフ・表のタイトルには対象・期間・粒度・単位を含める
悪いタイトル例
- 実績
- 進捗状況
- 比較
良いタイトル例
- 月次申請件数の推移(2025年1月〜12月 / 前年同月比)
- 都道府県別 交付率(2025年12月1日時点 / 目標比)
- フェーズ別 処理件数(2025年上期 vs 下期)
色ルール
- 強調色は1画面に1〜2色に絞る
- 赤は「未達・警告・異常」のみに使う。それ以外の強調に赤を使わない
- ウォーターフォール図の色は意味で固定する:増加=青、減少=赤、合計=灰
- 地図は単色グラデーションで数量を表現する。多色は使わない
- 色だけで系列・良し悪しを伝える場合は、凡例またはラベルを必ず補う
- ページをまたいで色の意味を変えない
レイアウトルール
- レイアウト比率は16:9(横長)または4:3を統一する。混在しない
- 要素の端をグリッドに揃える
- 余白を確保し、要素を詰め込まない
固定配置(変更不可)
公共ダッシュボードでは以下の配置を固定する。デザイン上の都合で変えない。
| 要素 | 配置 |
|---|---|
| タイトル | 左上 |
| 基準日時 | 左下フッター |
| 組織名・出典 | 右下フッター |
| KPI・サマリー | コンテンツエリア上部 |
| 詳細グラフ | KPI・サマリーの下 |
| フィルター・スライサー | コンテンツ外側(上部または左端) |
禁止事項
- 実績のみのKPI表示(目標値・比較軸なし)
- 基準日時・出典の省略
- 4項目以上への円グラフ・ドーナツグラフの使用
- 階層構造がないデータへのツリーマップの使用
- 散布図を大小比較・時系列に使用すること
- 2軸の複合グラフで単位の違いを明示しないこと
- 地図を地域差以外(カテゴリ比較など)の目的に使用すること
- 3Dグラフの使用
- 軸の0始点省略を注記なしで行うこと
- ページをまたいで色の意味を変えること
例外条件
- 構成比が3項目以内で直感的把握が優先される場合:円グラフ・ドーナツグラフを許容
- 時系列データで規模の変化を強調したい場合:面グラフを折れ線の代替として許容
- 複合グラフで2軸を使う場合:軸の単位の違いをタイトルまたは凡例に明示すれば許容
- 組織のブランド配色が定められている場合:増加/減少/警告の色の意味を損なわない範囲で調整を許容
- 棒グラフの0始点が比較性を著しく下げる場合:「軸は〇〇から表示」の注記を入れることで例外的に許容
レビュー観点
1. データの信頼性
- 基準日時が記載されているか
- 出典・組織名が明記されているか
- KPIに目標値・計画比が併記されているか
- 数値に単位が入っているか
2. 比較軸
- 実績値に対応する比較軸(目標・前期・計画)があるか
- 比較基準が何かをタイトルまたは注記で明示しているか
3. グラフ選定
- 目的(比較・推移・構成比・分布・相関)に合ったグラフ種別か
- 円グラフの項目数は3以内か
- ツリーマップを使う場合、階層構造があるデータか
- 2軸の複合グラフは単位の違いを明示しているか
4. タイトルと注記
- タイトルが
主題|補足の形式になっているか - タイトルに対象・期間・単位が入っているか
- 基準日時と組織名が所定の位置にあるか
5. 色とレイアウト
- 強調色が1〜2色に抑えられているか
- 赤が未達・警告以外に使われていないか
- ウォーターフォール図の色(増加・減少・合計)が統一されているか
- 地図が単色グラデーションになっているか
- KPIがコンテンツ上部に配置されているか
実行指示例
- このダッシュボード案を、公共性・説明責任の観点からレビューして。KPI・グラフ・タイトル・色の順で改善点を出して
- このグラフ構成を、誤解が起きにくい形に組み替えて。比較軸の明示とタイトルの改善を優先して
- この資料のタイトルと注記を、基準日時・出典・比較軸が明確になるよう修正して